§11 実数に対する代数演算 (その 2)

  1. 乗算: 乗算では最初に (\(0\) を含んだ) 正の数だけを考え、§4§7 で扱った正の有理数からなる切断に戻ると簡単になる。\((c)\) を \((ab)\)、\((C)\) を \((AB)\) とすれば加算と本質的に同じ道をたどれる。議論が唯一異なるのが、最大でも一つの例外を除いた全ての有理数が \(c\) または \(C\) に属することを示す部分である。\(a,\ A,\ b,\ B\) を \(C - c\) が好きなだけ小さくなるように選べることを示すこの部分では、次の等式を使う: \[ C - c = AB - ab = (A - a)B + a(B - b) \] そして負の数を定義に含めるために、正の数 \(\alpha\) と \(\beta\) に対して次のように定義する: \[ (-\alpha)\beta = -\alpha\beta,\quad \alpha(-\beta) = -\alpha\beta,\quad (-\alpha)(-\beta) = \alpha\beta \]

  2. 除算: 除算の定義は (\(0\) 以外の) 数 \(\alpha\) に対する逆数 \(1/\alpha\) の定義からはじめる。最初は正の数と正の有理数の切断だけを考え、正の数 \(\alpha\) の逆数を下クラス \((1/A)\) と 上クラス \((1/a)\) を使って定義する。そして負の数 \(-\alpha\) の逆数を \(1/(-\alpha) = -(1/\alpha)\) と定義し、\(\alpha/\beta\) を次のように定義する: \[ \alpha/\beta = \alpha × (1/\beta) \]

ここまでくれば、初等代数における概念や操作の全てを有理数と無理数の実数全てに対して適用できる。ただしこの処理を詳細に示すことはしない。特に重要で特殊な一部の無理数クラスに注意を向けた方が面白いし、得るものも多いだろう。

例 6

次の等式が表す定理を示せ:

  1. \(\alpha × 0 = 0 × \alpha = 0\)
  2. \(\alpha × 1 = 1 × \alpha = \alpha\)
  3. \(\alpha × (1/\alpha) = 1\)
  4. \(\alpha\beta = \beta\alpha\)
  5. \(\alpha(\beta\gamma) = (\alpha\beta)\gamma\)
  6. \(\alpha(\beta + \gamma) = \alpha\beta + \alpha\gamma\)
  7. \((\alpha + \beta)\gamma = \alpha\gamma + \beta\gamma\)
  8. \(|\alpha\beta| = |\alpha|\, |\beta|\)
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