§14 二次の不尽根数に関する諸定理
二つの純粋な二次の不尽根数が同じ不尽根数の有理数倍として表せるなら、二つは相似 (similar) であると言う。そうでないなら非相似 (dissimiar) と言う。例えば \[ \sqrt{8} = 2\sqrt{2},\quad \sqrt{\frac{25}{2}} = \frac{5}{2}\sqrt{2} \] だから、二つの純粋な不尽根数 \(\sqrt{8}\) と \(\sqrt{\frac{25}{2}}\) は相似だと分かる。一方 \(M\) と \(N\) が共通約数を持たない整数であって両方とも完全平方数でないなら、\(\sqrt{M}\) と \(\sqrt{N}\) は非相似である。証明は次の通り。もし相似なら \[ \sqrt{M} = \frac{p}{q}\sqrt{\frac{t}{u}},\quad \sqrt{N} = \frac{r}{s}\sqrt{\frac{t}{u}} \] となる。ここで \(p,q,r,s,t,u\) は全て整数である。
このとき \(\sqrt{MN}\) は有理数であり、さらに 例 2.3 より整数となる。よってある整数 \(P^{2}\) があって \(MN=P^{2}\) となる。\(P\) の因数を \(a,\ b,\ c,\ \ldots\) とすれば \[ MN = a^{2\alpha} b^{2\beta} c^{2\gamma}\ \ldots \] と表せる (\(\alpha,\ \beta,\ \gamma,\ \ldots\) は正の整数)。このとき \(MN\) は \(a^{2\alpha}\) で割り切れ、次のどれかが成り立つ: (i) \(M\) が \(a^{2\alpha}\) で割り切れる (ii) \(N\) が \(a^{2\alpha}\) で割り切れる (iii) \(M\) と \(N\) の両方が \(a\) で割り切れる。\(M\) と \(N\) は共通因数を持たないので、最後のケースはあり得ない。この議論は全ての因数 \(a^{2\alpha},\ b^{2\beta},\ c^{2\gamma},\ \ldots\) に対して行えるので、\(M\) はこの因数のいくつかで割り切れ、\(N\) はそれ以外の因数で割り切れる。よって \[ M = P_{1}^{2},\quad N = P_{2}^{2} \] となる。ここで \(P_{1}^{2}\) は \(a^{2\alpha},\ b^{2\beta},\ c^{2\gamma},\ \ldots\) のいずれかの積で、\(P_{2}^{2}\) はそれ以外の積である。したがって \(M\) と \(N\) は両方とも完全平方数となるが、これは仮定と矛盾する。
\(A,\ B,\ C,\ D\) が有理数で \[ A + \sqrt{B} = C + \sqrt{D} \] なら、「\(A = C\) かつ \(B = D\)」または「\(B\) と \(D\) の両方が有理数を二乗した数である」が成り立つ。
証明を示す。仮定から \(B - D\) と \[ \sqrt{B} - \sqrt{D} = C - A \] がどちらも有理数と分かる。\(B\) が \(D\) と等しくないなら \[ \sqrt{B} + \sqrt{D} = \frac{B - D}{\sqrt{B}- \sqrt{D}} \] も有理数となり、よって \(\sqrt{B}\) と \(\sqrt{D}\) も有理数となる (\(B\) と \(D\) が等しいとき \(A\) と \(C\) が等しいのは明らかに分かる)。
\(A + \sqrt{B} = C + \sqrt{D}\) なら \(A - \sqrt{B} = C - \sqrt{D}\) である。ただし \(\sqrt{B}\) と \(\sqrt{D}\) が両方とも有理数の場合は除く。
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\(\sqrt{2}\) と \(\sqrt{3}\) が相似でない不尽根数なことを定義を使って示せ。
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\(a\) を有理数とすると、\(\sqrt{a}\) と \(\sqrt{1/a}\) が相似な不尽根数であることを示せ (両方とも有理数である場合は除く)。
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\(a\) と \(b\) が有理数なら、\(\sqrt{a} + \sqrt{b}\) が有理数となるのは \(\sqrt{a}\) と \(\sqrt{b}\) が両方とも有理数なときに限る。\(a \neq b\) なら \(\sqrt{a} - \sqrt{b}\) についても同じことが言える。
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等式 \[ \sqrt{A} + \sqrt{B} = \sqrt{C} + \sqrt{D} \] が成り立つなら、(a) \(A = C\) かつ \(B = D\)、(b) \(A = D\) かつ \(B = C\)、(c) \(\sqrt{A},\ \sqrt{B},\ \sqrt{C},\ \sqrt{D}\) が全て有理数または相似な不尽根数、のいずれかが成り立つ。 [与えられた方程式を二乗して上述の定理を使う]
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\((a + \sqrt{b})^{3}\) と \((a - \sqrt{b})^{3}\) はどちらも、\(\sqrt{b}\) が有理数でない限り有理数にならない。
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\(p,\ q\) を有理数としたとき、\(x = p + \sqrt{q}\) に対する \(x^{m}\) (\(m\) は任意の整数) が有理数 \(P\) と \(Q\) を使って \(P + Q \sqrt{q}\) という形で表せることを示せ。例を次に示す: \[ \begin{aligned} (p + \sqrt{q})^{2} & = p^{2} + q + 2p\sqrt{q}, \\ (p + \sqrt{q})^{3} & = p^{3} + 3pq + (3p^{2} + q)\sqrt{q} \end{aligned} \] ここから有理数係数の任意の多項式、つまり次の形をした任意の式 \[ a_{0}x^{n} + a_{1}x^{n-1} + \cdots + a_{n} \] (\(a_{0},\ \ldots,\ a_{n}\) は有理数) が \(P + Q\sqrt{q}\) という形で表せることを示せ。
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\(b\) が完全平方数でないとすると、\(a + \sqrt{b}\) がある有理係数代数方程式の根なら \(a - \sqrt{b}\) も同じ方程式の根となる。
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\(\dfrac{1}{p + \sqrt{q}}\) を問題 6 の形で表せ。 [分母と分子に \(p - \sqrt{q}\) を乗じる]
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\(G(x),\ H(x)\) を \(x\) の有理係数多項式とする。\(G(x)/H(x)\) が有理数 \(P,\ Q\) を使って \(P + Q\sqrt{q}\) と表せることを問題 6 と問題 8 を使って示せ。
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\(p,\ q,\ p^{2} - q\) が正なら、\(\sqrt{p + \sqrt{q}}\) は \(\sqrt{x} + \sqrt{y}\) と表せる。ここで \(x,\ y\) は \[ x = \frac{1}{2}\left(p + \sqrt{p^{2} - q}\right),\quad y = \frac{1}{2}\left(p - \sqrt{p^{2} - q}\right) \] である。
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\(p,\ q\) を有理数とする。有理数 \(x,\ y\) を使って \(\sqrt{p + \sqrt{q}}\) を \(\sqrt{x} + \sqrt{y}\) と表せるための条件を求めよ。
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\(a^{2} - b\) を正の実数とする。 \[ \sqrt{a + \sqrt{b}} + \sqrt{a - \sqrt{b}} \] が有理数となる必要十分条件は、\(a^{2} - b\) と \(\frac{1}{2}\left(a + \sqrt{a^{2} - b}\right)\) がどちらも有理数の二乗となることである。