§1 有理数

正または負の整数 \(p\) と \(q\) に対して、その比 \(r = p/q\) を有理数 (rational number) と呼ぶ。このとき \(p\) と \(q\) に公約数が存在するなら両方を公約数で割ることで、\(p\) と \(q\) が公約数を持たないと仮定できる。さらに次の等式が成り立つので、\(q\) が正だとも仮定できる: \[ \begin{aligned} \frac{p}{-q} & = \frac{-p}{q}, \quad \frac{-p}{-q} & = \frac{p}{q} \end{aligned} \] こうして定義される有理数に、\(p = 0\) とした「有理数 \(0\)」を追加する。以降はこの有理数について考える。

読者は有理数に関する基本的な算術規則を知っているものとする。次の例はそういった基本的な知識しか必要としない。

例 1
  1. \(r\) と \(s\) が有理数なら、\(r + s,\ r - s,\ rs,\ r/s\) は有理数となる。ただし最後では \(s = 0\) とする (\(s = 0\) のとき \(r/s\) は意味を持たない)。

  2. \(\lambda,\ m,\ n\) が正の有理数で \(m \gt n\) なら、\(\lambda(m^{2} - n^{2}),\ 2\lambda mn,\ \lambda (m^{2} + n^{2})\) はどれも正の有理数となる。この事実を使って、直角三角形で三辺の長さが有理数であるものを無限に計算する方法を示せ。

  3. 任意の有限小数は分母の約数が \(2\) と \(5\) だけである有理数を表す。逆にそのような有理数は (ただ一つの) 有限小数で表せる。

    [小数の一般理論は第四章で考える]

  4. 全ての正の有理数は次の簡単な数列で表せる: \[ \frac{1}{1},\quad \frac{2}{1},\quad \frac{1}{2},\quad \frac{3}{1},\quad \frac{2}{2},\quad \frac{1}{3},\quad \frac{4}{1},\quad \frac{3}{2},\quad \frac{2}{3},\quad \frac{1}{4},\ \ldots \] \(p/q\) がこの数列の \([\frac{1}{2}(p + q - 1)(p + q - 2) + q]\) 番目の項であることを示せ。

    [この数列では全ての有理数が無限回繰り返される。例えば \(1\) は \(\dfrac{1}{1},\ \dfrac{2}{2},\ \dfrac{3}{3},\ \ldots\) で現れる。単純な形で以前に出現した数を飛ばせば重複をなくせるが、そうすると \(p/q\) の精確な位置を求める問題がより複雑になる]

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