§27 陰な代数関数
-
もし \[ y = \frac{\sqrt{1 + x} - \sqrt[3]{1 - x}} {\sqrt{1 + x} + \sqrt[3]{1 - x}} \] なら、次の関係が容易に分かる: \[ y = \sqrt{x} + \sqrt{x + \sqrt{x}} \] あるいはもし \[ y = \sqrt{x} + \sqrt{x + \sqrt{x}} \] なら、次が成り立つ: \[ y^{4} - (4y^{2} + 4y + 1)x = 0 \] この二つの方程式は、どれも次の形をしている; \[ y^{m} + R_{1}y^{m-1} + \cdots + R_{m} = 0 \qquad \text{(1)} \] ここで \(R_{1},\ R_{2},\ \ldots,\ R_{m}\) は \(x\) の有理関数である。\(y\) をこれまでの例で考えた関数とすれば、\(y\) がこの形の方程式を満たすことは簡単に分かる。さらに任意の陽な代数関数についても同様だろうと自然に予想できる。この予想は正しく、証明も難しくないが、きちんとした証明を書くのに時間は割かないことにする。例を一つ示せば、証明がどのように進むかは理解できるだろう: \[ y = \frac{x + \sqrt{x} + \sqrt{x + \sqrt{x}} + \sqrt[3]{1 + x}} {x - \sqrt{x} + \sqrt{x + \sqrt{x}} - \sqrt[3]{1 + x}} \] とすると、次の式を得る: \[ y = \frac{x + u + v + w} {x - u + v - w}, \] \[ u^{2} = x,\quad v^{2} = x + u,\quad w^{3} = 1 + x \] 求めたい形の方程式を得るには、これらの方程式から \(u,\ v,\ w\) を削除すればよい。
以上の考察から、代数関数の定義 「関数 \(y = f(x)\) が \(x\) の代数関数 (algebraical function) であるとは、\(y\) が (1) の形をした方程式の根である、つまり \(x\) の有理関数を係数に持つ \(y\) の \(m\) 次方程式の根であることを言う」が導かれる。明らかに、方程式の最初の係数が \(1\) であると仮定しても一般性は失われない。
この関数のクラスは §26 で考えた陽な代数関数を全て含む。しかし、陽な代数関数として表せない関数もこのクラスには含まれる。一般的に言って \(m\) が \(4\) より大きいときの方程式 (1) は、\(y\) について \(x\) の式として陽に解くことができない。もちろん \(m = 1,\ 2,\ 3,\ 4\) では陽な解が存在し、\(m\) が大きくても陽な解が存在する特殊な場合もある。
代数関数の定義を前章で示した代数的数の定義と比較するとよい。
-
\(m = 1\) なら、\(y\) は有理関数である。
-
\(m = 2\) なら (1) の方程式は \(y^{2} + R_{1}y + R_{2} = 0\) であり、 \[ y = \frac{1}{2}\left(-R_{1} ± \sqrt{R_{1}^{2} - 4R_{2}}\right) \] となる。この関数は \(R_{1}^{2} \geq 4R_{2}\) となる全ての \(x\) の値に対して定義される。\(R_{1}^{2} \gt 4R_{2}\) のときこの関数は二つの値を持ち、\(R_{1}^{2} = 4R_{2}\) のときには一つの値を持つ。
\(m = 3,\ 4\) の場合には、代数の文献にある方法を使って三次方程式および四次方程式を解くことになる。ただしこの処理は複雑で式の形も扱いづらいので、最初の方程式を使った方が関数の性質を簡単に調べられることが多い。
-
次の方程式が定義する関数を考える: \[ y^{2} - 2y - x^{2} = 0,\quad y^{2} - 2y + x^{2} = 0,\quad y^{4} - 2y^{2} + x^{2} = 0 \] いずれの場合でも \(y\) を \(x\) の陽な関数として書くことができ、それを見れば関数の定義される \(x\) の値が分かる。
-
次の関数それぞれについて、関数が満たす \(x\) の有理式を係数に持つ代数方程式を示せ: \[ \sqrt{x} + \sqrt{1/x},\quad \sqrt[3]{x} + \sqrt[3]{1/x},\quad \sqrt{x + \sqrt{x}},\quad \sqrt{x + \sqrt{x + \sqrt{x}}} \]
-
方程式 \(y^{4} = x^{2}\) を考えよ。
[まず \(y^{2} = ±x\) が分かり、ここから \(x\) が正なら \(y = \sqrt{x}\) で、\(x\) が負なら \(y = \sqrt{-x}\) が分かる。よってこの関数は \(x = 0\) 以外の全ての値に対して二つの値を持つ]
-
\(x\) の代数関数の代数関数もまた \(x\) の代数関数である。
[仮定から次が成り立つ: \[ y^{m} + R_{1}(z)y^{m-1} + \cdots + R_{m}(z) = 0 \] ここで \[ z^{n} + S_{1}(x)z^{n-1} + \cdots + S_{n}(x) = 0 \] である。\(z\) を削除すれば次の式が得られる: \[ y^{p} + T_{1}(x)y^{p-1} + \cdots + T_{p}(x) = 0 \] 大文字は全て有理関数を表す]
-
代数的な形で陽に表せない関数の例を示しておくべきだろう。次の方程式を満たす関数 \(y\) がそのような例である: \[ y^{5} - y - x = 0 \] しかし \(y\) を代数的な形で陽に表せないことの証明は難しいので、ここでは示さない。