§32 平面内の曲線
ここまでは \[ y = f(x) \qquad \text{(1)} \] という表記で \(y\) の値が \(x\) から定まることを表現した。この表現が一番自然なのは、\(y\) が \(x\) の数式として明示的に書ける次のような場合である: \[ y = x^{2},\quad \sin x,\quad a\cos^{2}x + b\sin^{2}x \]
しかしこの形で表せない関係、あるいは表せたとしても複雑すぎて手に負えない関係を表す関数を扱わなければならない状況というのは非常に多い。例えば \(y^{5} - y - x = 0\) や \(x^{5} + y^{5} - ay = 0\) では、\(y\) を \(x\) の陽な代数関数として表現できない。あるいはもし \[ x^{2} + y^{2} + 2Gx + 2Fy+ C = 0 \] であれば、\(y\) は明示的に表現できる: \[ y = -F + \sqrt{F^{2} - x^{2} - 2Gx - C} \] しかしそうだとしても、\(x\) の関数 \(y\) と \(x\) との関係は最初の方程式を見た方が分かりやすい。
これら二種類の関数の関係が、二つの変数 \(\bm{x}\) と \(\bm{y}\) を持つ関数が \(\bm{0}\) に等しい関係として完全に表現できることに気が付くだろう。つまり次の方程式である: \[ f(x, y) = 0 \qquad \text{(2)} \]
これからは関数の関係を表現するのにこの方程式を標準形として使っていく。(1) は \(y - f(x)\) という特殊な形をした \(x\) の関数 \(y\) を表すので、この方程式は (1) を特殊ケースとして含む。この定義により「\(f(x, y) = 0\) を満たす点 \((x, y)\) の軌跡」「\(f(x, y) = 0\) で定義される関数 \(y\) のグラフ」「曲線 \(f(x, y) = 0\)」「軌跡 \(f(x, y) = 0\)」あるいは「曲線の方程式」や「軌跡の方程式」といった表現が可能になる。
曲線を表現するのに便利な方法がもう一つある。\(x\) と \(y\) がどちらも第三の変数 \(t\) の関数となる場合であり、このとき次のように書ける (\(t\) は補助的な変数であり、幾何学的な意味はない) : \[ x = f(t),\quad y = F(t) \qquad \text{(3)} \] \(t\) の値を定めると対応する \(x\) と \(y\) の値が決定し、二つの値が点 \((x, y)\) を定義する。異なる \(t\) の値に対応する点を全て集めれば、方程式 \(\bm{(3)}\) で定義される軌跡のグラフが手に入る。例えば \[ x = a\cos t,\quad y = a\sin t \] がその例である。\(t\) が \(0\) から \(2\pi\) まで動くとき \((x, y)\) が原点中心で半径 \(a\) の円を描くというのは容易に分かる。\(t\) がこの範囲を超えて動くと、\((x, y)\) は同じ円を何度も回る。この場合には二つの式を二乗して足せば \(x\) と \(y\) の直接的な関係を得られる: \(t\) が消えて \(x^{2} + y^{2} = a^{2}\) となる。
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\(f\) と \(\phi\) を多項式とする。この二つの方程式が \(x\) と \(y\) に関する連立方程式として解けるとき、\(f(x, y) = 0,\ \phi(x, y) = 0\) という方程式で定義される二つの曲線の交点が求められる。通常この解は有限個の \((x, y)\) の組から構成される。つまり二つの方程式は有限個の孤立した点を表す。
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曲線 \((x + y)^{2} = 1,\ xy = 1,\ x^{2} - y^{2} = 1\) が通る点を調べよ。
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曲線 \(f(x, y) + \lambda\phi(x, y) = 0\) は \(f = 0\) と \(\phi = 0\) の交点を通る曲線を表す。
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\(t\) が実数全てを動くとき、方程式 \[ \begin{aligned} (\alpha)\ \quad& x = at + b,\quad y = ct + d \\ (\beta)\ \quad& \frac{x}{a} = \frac{2t}{1 + t^{2}},\quad \frac{y}{a} = \frac{1 - t^{2}}{1 + t^{2}} \end{aligned} \] が表す軌跡は何か?