§35 変位の同値性および実数との積
前節の設定で \(P\) の座標が \((\xi, \eta)\) で \(Q\) の座標が \((\xi', \eta')\) なら、次の式が直ちに分かる: \[ x = \xi' - \xi,\quad y = \eta' - \eta \] つまり \((\xi, \eta)\) から \((\xi', \eta')\) への変位は次のように表記できる: \[ [\xi' - \xi, \eta' - \eta] \]
二つの変位 \([x, y],\ [x', y']\) は \(x = x'\) かつ \(y = y'\) のとき等しく、等しいのはこの場合に限る。よって \([x, y] = [x', y']\) が成り立つための必要十分条件が分かる: \[ x = x',\quad y = y' \qquad \text{(1)} \]
\(\overline{PQ}\) の逆の変位 \(\overline{QP}\) は \([\xi - \xi', \eta - \eta']\) であり、次のように定めるのが自然である: \[ \begin{aligned} [\xi - \xi', \eta - \eta'] & = -[\xi' - \xi, \eta' - \eta],\\ \overline{QP} & = -\overline{PQ} \end{aligned} \] この二つの式が \(-[\xi' - \xi, \eta' - \eta],\ -\overline{PQ}\) という表記の意味を定義する。こうして \[ -[x, y] = [-x, -y] \] を定義したなら、続いて符号を問わない任意の実数 \(\alpha\) について \[ \alpha[x, y] = [\alpha x, \alpha y] \qquad \text{(2)} \] と自然に定義できる。この定義を使えば、図 19 で \(OB = -\frac{1}{2}OA\) とき次が成り立つと分かる: \[ \overline{OB} = -\frac{1}{2}\overline{OA} = -\frac{1}{2}[x, y] = [-\frac{1}{2}x, -\frac{1}{2}y] \]
方程式 (1) と (2) は、変位の同値性と変位と実数の乗算という変位に関する二つの重要な概念を表している。