§51 補間

\(n\) の関数が与えられたときに、\(x\) が正の整数のときその関数と同じ値を取る \(x\) の関数を求める問題は、高等数学において非常に重要である。これは関数補間問題 (problem of functional interpolation) と呼ばれる。

しかしこれは、この条件を満たす \(x\) の関数を適当に一つ見つける問題ではない: 上述の通り定義されてない部分には好きな値を割り当てられるので、この問題はあまりにも簡単すぎる。例えば \(n\) の関数の値が \(x\) の関数の値の全てだとみなして他の値では値を持たないとできるが、これは明らかに私たちが望むものではない。必要なのは、\(x\) の(できる限り単純な) であって \(x = 1,\ 2,\ \ldots\) で与えられた関数と同じ値を持つものである。

\(n\) が最初から式で定義される場合など、補間問題に明らかな解が存在することもある。例えば \(y = \phi(n)\) で \(\phi(n)\) が \(n^{2}\) や \(\cos \pi\) といった関数なら、こういった関数は \(n\) が正の整数でなくても意味を持つので、\(x\) の関数 \(y = \phi(x)\) を自然に考えられる。ただこの非常に単純な場合でさえ、同程度に明らかな別の解が簡単に見つかる。例えば \(\sin n\pi = 0\) なので \[ y = \phi(x) + \sin x\pi \] は \(x = n\) に \(\phi(n)\) という値を割り当てる。

\(\phi(n)\) が式として定義されていても、その式が一部の \(x\) で値を持たないというケースもある。例えば \((-1)^{n}\) がそうである (\(x\) が無理数、または \(x\) が有理数で分母が偶数のとき値を持たない)。ただし全ての \(x\) で定義されるよう式を変形できる可能性もある。\((-1)^{n}\) の例であれば \[ (-1)^{n} = \cos n\pi \] が整数 \(n\) に対して成り立つので、関数 \(\cos x\pi\) はこの補間問題の解となる。

\(\phi(x)\) が正の整数以外の実数に対して定義されていても、全てに対して定義されるわけではないという場合もある。例えば \(y = n^{n}\) からは \(y = x^{x}\) という式が導かれるが、この式が意味を持つのは残りの \(x\) の一部だけである。正の \(x\) だけを考えるとすれば、(初等代数の有理指数の定義を使うとして) \(x^{x}\) は \(x\) が有理数のときに意味を持つものの、\(x\) が無理数のときは (少なくとも現在の私たちには) 意味をなさない。よってこの補間問題は、\(x^{x}\) を \(x\) が無理数の場合でも意味を持つよう定義を拡張する問題となる。この拡張方法は後述する。

続いて \[ y = 1 · 2 \cdots n = n! \] を考える。\(x\) が正の整数以外の値のとき \(x!\) は意味を持たないので、\(x = n\) で \(n!\) となる簡単な \(x\) の式は存在しない。実はこれは補間問題を解決するための試みが数学における重要な進歩に結び付いたケースであり、補間としての条件を満たすだけではなく他にも興味深い重要な性質をいくつも兼ね備えた関数 (ガンマ関数, Gamma-function) の発見に数学者は成功している。

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