§113 微分の一般的性質
この節の命題では、考えている \(x\) において \(f(x)\) と \(F(x)\) に \(f'(x)\) と \(F'(x)\) という導関数が存在すると仮定する。
\(\phi(x) = f(x) + F(x)\) なら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = f'(x) + F'(x) \] となる。
\(\phi(x) = kf(x)\) で \(k\) が定数なら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = kf'(x) \] となる。
例 35.1 の定理からこの二つの結果を導くのは読者への練習問題とする。
\(\phi(x) = f(x)F(x)\) なら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = f(x)F'(x) + f'(x)F(x) \] となる。
次の等式から示せる: \[ \begin{aligned} \phi'(x) & = \lim\frac{f(x + h)F(x + h) - f(x)F(x)}{h}\\ & = \lim\left\{f(x + h)\frac{F(x + h) - F(x)}{h} + F(x)\frac{f(x + h) - f(x)}{h}\right\}\\ & =f(x)F'(x) + F(x)f'(x) \end{aligned} \]
\(\phi(x) = \dfrac{1}{f(x)}\) なら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = -\frac{f'(x)}{\{f(x)\}^{2}} \] となる。
もちろんこの命題では考えている \(x\) で \(f(x)\) が \(0\) にならないと仮定する。この仮定の下で \[ \phi'(x) = \lim \frac{1}{h} \left\{\frac{f(x) - f(x + h)}{f(x + h)f(x)}\right\} = -\frac{f'(x)}{\{f(x)\}^{2}} \] が成り立つ。
\(\phi(x) = \dfrac{f(x)}{F(x)}\) なら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = \frac{f'(x)F(x) - f(x)F'(x)}{\{F(x)\}^{2}} \] となる。
これは結果 3 と結果 4 から直ちに従う。
\(\phi(x) = F\{f(x)\}\) なら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = F'\{f(x)\} f'(x) \] となる。
証明は次の通り。 \[ f(x) = y,\quad f(x + h) = y + k \] とすると、\(h \to 0\) のとき \(k \to 0\) および \(k/h \to f'(x)\) が成り立つ。よって \[ \begin{aligned} \phi'(x) & = \lim \frac{F\{f(x + h)\} - F\{f(x)\}}{h}\\ & = \lim \left\{\frac{F(y + k) - F(y)}{k}\right\} × \lim \left(\frac{k}{h}\right)\\ & = F'(y)f'(x) \end{aligned} \] が分かる。
\(F(x) = kx\) および \(F(x) = 1/x\) とすれば結果 2 と結果 4 が得られる。また \(f(x) = ax + b\) としても興味深い関係が得られる: \(F(ax + b)\) の導関数は \(aF'(ax + b)\) である。
最後の命題には少し説明がいる。\(x = \psi(y)\) で、とある \(y\) の区間で \(\psi(y)\) が連続かつ狭義単調増加もしくは狭義単調減少 (§95) だとする。このとき \(\psi\) の「逆関数」 \(y = \phi(x)\) が存在する (§109)。
\(\phi\) が \(\psi\) の逆関数で、\(y = \phi(x)\) および \(x = \psi(y)\) とする。\(\psi(y)\) の導関数が \(\psi'(y)\) で \(0\) でないなら、\(\phi(x)\) の導関数は \[ \phi'(x) = \frac{1}{\psi'(y)} \] となる。
\(\phi(x + h) = y + k\) とすると \(k \to 0\) のとき \(h \to 0\) であり、 \[ \begin{aligned} \phi'(x) & = \lim_{h \to 0} \frac{\phi(x + h) - \phi(x)}{(x + h) - x} \\ & = \lim_{k \to 0} \frac{(y + k) - y}{\psi(y + k) - \psi(y)} \\ & = \frac{1}{\psi'(y)} \end{aligned} \] が成り立ことから示せる。最後の結果は関係 \(y = \phi(x)\) を使って \(\phi'(x) = 1/\psi'\{\phi(x)\}\) という \(x\) を使った形に書き直せる。つまりこの結果は逆関数の微分が分かっている関数の微分を可能にする。