§116 多項式の微分
続いて単純な種類の関数の微分についてさらに体系的に見ていく。
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多項式: なら、 が成り立つ。 の 次方程式をいわゆる二項形式 (binomial form) で表した方が分かりやすい場合もある: このときは となる。
の二項形式が と表記されることもある。この表記を使えば である。
後で示すように、 は必ず 個の因数の積として次のように書ける: ここで は実数または複素数を表す。このとき となる。つまり 個の因数の積を全て足せば微分が得られる。この形の結果は のいくつかが等しい場合でも成り立つ。ただしその場合には等しい の分だけ右辺の因数を反復する。つまり が となる。
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が多項式なら、 が を展開した式における の係数だと示せ。
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が で割り切れるなら、 は で割り切れる。一般に が で割り切れるなら、 は で割り切れる。
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逆に と が両方とも で割り切れるなら、 は で割り切れる。そして と が両方とも で割り切れるなら、 は で割り切れる。
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多項式 について、 の重根とその重複度を可能な限り完全に求める方法を示せ。初等代数的な操作だけを使うこと。
[ を と の最大公約数として、 を と の最大公約数、 を と の最大公約数 と以下同様に定める。すると の根が の二重根、 の根は の 三重根 となる。ただし の根を代数的に求められるとは限らない。例えば だと および となるが、一つ目の式は代数的に解くことができない]
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次の方程式の根とその重複度を求めよ:
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が重根を持つ、つまり という形に変形できるなら、 が で割り切れる。よって である。さらに は を満たす。最終的に得られる条件が だと示せ。
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方程式 は のときに限って二重根を持つ。
(Math. Trip. 1905.)
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方程式 が のとき二つの根を持つことを示せ。ここで および とする。
[方程式に を代入すると となる。これは と同じ根を持つ]
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を の根とする。このとき および を循環させた三つの値を根に持つ方程式は である。ここで とする。 のどれか二つが等しいときこの三次方程式の根の二つが等しくなる。さらに問題 8 から が分かる。
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が多項式なら、任意の の根の組の間に の根がある。
多項式に限らない一般的な関数のクラスに対するこの定理の証明は後で示す。ここで示すのは多項式のみに適用できる代数的な証明である。 を隣り合う二つの根として、その重複度を とする。このとき多項式 を使って と表せば、 は で同じ符号を持つ。このとき とすれば、 と は逆の符号を持つ。よって および は と のどこかの で になる。