§139 \(y^{2} = ax^{2} + 2bx + c\) における積分 \(∫ R(x, y)\, dx\)
特殊な双曲線 \(y^{2} = ax^{2} + 2bx + c\) で関連付いた変数に対する §134 で考えた積分の最も一般的な形を考える。つまり \(X = y^{2} = ax^{2} + 2bx + c\) としたときの \[ \int R(x, \sqrt{X})\, dx \qquad \text{(1)} \] である。\(R\) は実有理関数とする。
被積分関数は \(x\) と \(\sqrt{X}\) の多項式 \(P\) と \(Q\) を使って \(P/Q\) と書ける。よって \(A,\ B,\ \ldots\) を \(x\) の有理関数とすれば \[ \frac{A + B\sqrt{X}}{C + D\sqrt{X}} = \frac{(A + B\sqrt{X})(C - D\sqrt{X})}{C^{2} - D^{2}X} = E + F\sqrt{X} \] という形まで簡略化できる。ここで新しく生じる問題は \(F\sqrt{X}\) の積分である。この問題は \(x\) の有理関数 \(G\) に対する \(G/\sqrt{X}\) の積分と考えることもできる。そして \[ \int \frac{G}{\sqrt{X}}\, dx \qquad \text{(2)} \] は \(G\) を部分分数に分解すれば必ず計算できる。この計算では三種類の積分が生じる。
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まず、正の整数 \(m\) に対する \[ \int \frac{x^{m}}{\sqrt{X}}\, dx \qquad \text{(3)} \] という積分が生じる可能性がある。\(m = 0\) と \(m = 1\) の場合は §136 で既に議論した。それより大きい \(m\) に対するこの積分を計算するには、次の関係を使う: \[ \begin{aligned} \frac{d}{dx}(x^{m-1}\sqrt{X}) & = (m - 1)x^{m-2} \sqrt{X} + \frac{(ax + b) x^{m-1}}{\sqrt{X}} \\ & = \frac{\alpha x^{m} + \beta x^{m-1} + \gamma x^{m-2}}{\sqrt{X}} \end{aligned} \] ここで \(\alpha,\ \beta,\ \gamma,\ \) は定数であり、その値は簡単に求められる。この等式の両辺を積分すれば、\(\text{(3)}\) の形をした積分の隣り合う三項に関する関係が得られる。\(m = 0\) と \(m = 1\) に対する積分は計算できているから、この関係を使えば他の \(m\) に対する積分も計算できる。
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第二の可能性として \[ \int \frac{dx}{(x - p)^{m}\sqrt{X}} \qquad \text{(4)} \] という形の積分が考えられる。\(m - p = \dfrac{1}{t}\) と置換すれば、この積分は \(\text{(3)}\) の形をした \(t\) に関する積分となる。
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最後に、\(G\) の分母の複素根に対応する項の積分が考えられる。複素根が単純な根である一番単純な場合だけを考える。このとき (§138 のように) \(G\) の共役な根の組に対応する項が次の形の積分となる: \[ \int \frac{Lx + M}{(Ax^{2} + 2Bx + C) \sqrt{ax^{2} + 2bx + c}}\, dx \qquad \text{(5)} \]
この積分を計算するには \[ x = \frac{\mu t + \nu}{t + 1} \] という置換を使う。ここで \(\mu\) と \(\nu\) は次の関係が成り立つように選ぶ: \[ a\mu\nu + b(\mu + \nu) + c = 0,\quad A\mu\nu + B(\mu + \nu) + C = 0 \] このとき \(\mu\) と \(\nu\) は次の方程式の根となる: \[ (aB - bA)\xi^{2} - (cA - aC)\xi + (bC - cB) = 0 \] この方程式は 例 46.12 の式 \(\text{(1)}\) と同じ形をしているので、実根を持つ。よってこの条件を満たす実数 \(\mu\) と \(\nu\) は確かに存在する。
置換を代入すれば、\(\text{(5)}\) の積分が \[ H\int \frac{t\, dt}{(\alpha t^{2} + \beta)\sqrt{\gamma t^{2} + \delta}} + K\int \frac{dt}{(\alpha t^{2} + \beta)\sqrt{\gamma t^{2} + \delta}}. \qquad \text{(6)} \] という形になると分かる。二番目の積分は \[ \frac{t}{\sqrt{\gamma t^{2} + \delta}} = u \] と置換すると有理化でき、 \[ \int \frac{dt}{(\alpha t^{2} + \beta) \sqrt{\gamma t^{2} + \delta}} = \int \frac{du}{\beta + (\alpha\delta - \beta\gamma) u^{2}} \] となる。最後に \(\text{(6)}\) の最初の積分は \(t = 1/u\) とすれば二番目の積分となり、ここで説明した方法で計算できる。行う置換は \(\dfrac{u}{\sqrt{\gamma + \delta u^{2}}} = v\) つまり \(\dfrac{1}{\sqrt{\gamma t^{2} + \delta}} = v\) である1。
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次の積分を計算せよ: \[ \int \frac{dx}{x \sqrt{x^{2} + 2x + 3}},\quad \int \frac{dx}{(x - 1) \sqrt{x^{2} + 1}},\quad \int \frac{dx}{(x + 1) \sqrt{1 + 2x - x^{2}}} \]
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次の等式を示せ: \[ \int \frac{dx}{(x - p) \sqrt{(x - p) (x - q)}} = \frac{2}{q - p} \sqrt{\frac{x - q}{x - p}} \]
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\(ag^{2} + ch^{2} = -\nu \lt 0\) なら \[ \int \frac{dx}{(hx + g) \sqrt{ax^{2} + c}} = -\frac{1}{\sqrt{\nu}} \arctan\left[ \frac{\sqrt{\nu(ax^{2} + c)}}{ch - agx} \right] \] が成り立つ。
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\(y^{2} = ax^{2} + 2bx + c\) のとき \(\displaystyle\int \frac{dx}{(x - x_{0})y}\) が次のいずれかの形で表せることを示せ: \[ -\frac{1}{y_{0}} \log\left| \frac{axx_{0} + b(x + x_{0}) + c + yy_{0}}{x - x_{0}} \right|,\quad \frac{1}{z_{0}} \arctan \left\{ \frac{axx_{0} + b(x + x_{0}) + c}{yz_{0}} \right\} \] \(ax_{0}^{2} + 2bx_{0} + c\) が正なら前者となり、\(y_{0}^{2}\) がその値に等しくなる。\(ax_{0}^{2} + 2bx_{0} + c\) が負なら後者となり、\(-z_{0}^{2}\) がその値に等しくなる。
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置換 \(y = \dfrac{\sqrt{ax^{2} + 2bx + c}}{x - p}\) を使って次を示せ: \[ \int \frac{dx}{(x - p) \sqrt{ax^{2} + 2bx + c}} = \int \frac{dy}{\sqrt{\lambda y^{2} - \mu}} \] ここで \(\lambda = ap^{2} + 2bp + c\) および \(\mu = ac - b^{2}\) とする。 [この帰着は美しいが、§139 で説明したものより入り組んでいる]
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積分 \[ \int \frac{dx}{x \sqrt{3x^{2} + 2x + 1}} \] が置換 \(x = \dfrac{1 + y^{2}}{3 - y^{2}}\) で有理化できると示せ。
(Math. Trip. 1911.)
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次の積分を計算せよ: \[ \int \frac{(x + 1)\, dx}{(x^{2} + 4) \sqrt{x^{2} + 9}} \]
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次の積分を計算せよ: \[ \int \frac{dx}{(5x^{2} + 12x + 8) \sqrt{5x^{2} + 2x - 7}} \]
[§139 の方法を適用する。\(\mu\) と \(\nu\) が満たす等式は \(\xi^{2} + 3\xi + 2 = 0\) であり、ここから \(\mu = -2\) と \(\nu = -1\) および置換 \(x = -\dfrac{2t + 1}{t + 1}\) が分かる。この置換により積分は \[ -\int \frac{dt}{(4t^{2} + 1) \sqrt{9t^{2} - 4}} - \int \frac{t\, dt}{(4t^{2} + 1) \sqrt{9t^{2} - 4}} \] となる。一つ目の積分では \(\dfrac{t}{\sqrt{9t^{2} - 4}} = u\) とすれば有理化でき、二つ目の積分では \(\dfrac{1}{\sqrt{9t^{2} - 4}} = v\) とすれば有理化できる]
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次の積分を計算せよ: \[ \int \frac{(x + 1)\, dx}{(2x^{2} - 2x + 1) \sqrt{3x^{2} - 2x + 1}},\quad \int \frac{(x - 1)\, dx}{(2x^{2} - 6x + 5) \sqrt{7x^{2} - 22x + 19}} \]
(Math. Trip. 1911.)
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\(y^{2} = ax^{2} + 2bx + c\) のときの積分 \(\displaystyle\int R(x, y)\, dx\) が置換 \(t = (x - p)/(y + q)\) によって有理化できると示せ。ここで \((p, q)\) は円錐曲線 \(y^{2} = ax^{2} + 2bx + c\) 上の任意の点とする。 [もちろんこの積分は \(t = (x - p)/(y - q)\) でも有理化できる。§134 を参照]
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ここで説明した積分方法は \(a/A = b/B\) のときには行えない。しかしこのときは置換 \(ax + b = t\) で積分を簡略化できる。代数関数の積分についてさらに詳しくは Stolz, Grundzüge der Differential-und-integralrechnung, vol. i, pp. 331 et seq. および Bromwich, Elementary Integrals (Bowes and Bowes, 1911) を参照。別の帰着が Sir G. Greenhill によっても示されている: 彼の A Chapter in the Integral Calculus, pp. 12 et seq. および §131 で示した文献を参照。[return]