§157 定積分
\(f(x)\) を連続関数とすると、曲線 \(y = f(x)\) と \(x\) 軸と二つの垂直な直線 \(x = a\) と \(x = b\) で囲まれる領域は有限の領域となる。第六章の §145 で示したように、\(F(x)\) が \(f(x)\) の「積分関数」のとき、つまり \[ F'(x) = f(x),\quad F(x) = \int f(x)\, dx \] のとき、この領域の面積は \(F(b) - F(a)\) となる。
\(F(x)\) を表す式の計算がいつでも可能なわけではないので、\(F(x)\) を明示せずに \(PpqQ\) の面積を表現する方法があれば便利である。そこで \[ (PpqQ) = \int_{a}^{b} f(x)\, dx \] と書くことにする。
この等式の右辺の式は二つの方法のどちらかで定義されているとみなせる。まず \(f(x)\) を積分した関数の一つ \(F(x)\) に対する \(F(b) - F(a)\) の省略形と考える方法がある。ここで \(F(x)\) を示す式が計算できていなくても構わない。あるいは §156 で直接定義される \(PpqQ\) の面積と考えてもよい。
実数 \[ \int_{a}^{b} f(x)\, dx \] を定積分 (definite integral) と呼ぶ。\(a\) は積分の下端 (lower limit) と呼ばれ、\(b\) は積分の上端 (upper limit)、\([a, b]\) は積分区間 (range of integration) と呼ばれる。定積分は \(a\) と \(b\) そして関数 \(f(x)\) だけに依存しており、\(x\) の関数ではない。不定積分に対応する形で、関数の積分 \[ F(x) = \int f(x)\, dx \] を \(f(x)\) の不定積分 (indefinite integral) と呼ぶことがある。
定積分と不定積分の違いは観察する視点の違いに過ぎない。定積分 \(\displaystyle\int_{a}^{b} f(x)\, dx = F(b) - F(a)\) は \(b\) の関数であり、\(f(b)\) という関数のとある不定積分ともみなせる。あるいは不定積分 \(F(x)\) は常に定積分を使って表せる: \[ F(x) = F(a) + \int_{a}^{x} f(t)\, dt \]
ただ「不定積分」や「積分関数」を考えるときには、片方がもう一方の導関数であるという二つの関数の関係を考える場合が多い。そして「定積分」を考えるときには、積分する区間の変動を通常は考えない。区間は \(0\) から \(1\) のような定数であることが多く、この場合には \[ \int_{0}^{1} f(x)\, dx = F(1) - F(0) \] は関数ではなく、ただの実数となる。
\(\displaystyle\int_{a}^{x} f(t)\, dt\) は導関数に \(f(x)\) を持つので、間違いなく \(x\) の連続関数となる。
\(1/x\) は全ての正の \(x\) で連続なので、ここまでの議論から関数 \(\log x\) が本当に存在することが証明できる。§128 ではこの存在を仮定していた。