第七章に関するその他の例

  1. 次のテイラー級数を確認せよ: \[ \begin{alignedat}{2} & \text{(1)} & \tan x & = x + \dfrac{1}{3} x^{3} + \dfrac{2}{15} x^{5} + \cdots, \\ & \text{(2)} & \sec x & = 1 + \dfrac{1}{2} x^{2} + \dfrac{5}{24} x^{4} + \cdots, \\ & \text{(3)}\quad & x\cosec x & = 1 + \dfrac{1}{6} x^{2} + \dfrac{7}{360} x^{4} + \cdots, \\ & \text{(4)} & x\cot x & = 1 - \dfrac{1}{3} x^{2} - \dfrac{1}{45} x^{4} - \cdots \end{alignedat} \]

  2. \(f(x)\) とその \(n + 2\) 次までの導関数が連続で \(f^{(n+1)}(0) \neq 0\) とする。第 \(n\) 項までのテイラー級数のラグランジュの剰余項における \(\theta\) の値を \(\theta_{n}\) とすると、 \[ \theta_{n} = \frac{1}{n + 1} + \frac{n}{2(n + 1)^{2}(n + 2)} \left\{\frac{f^{(n+2)}(0)}{f^{(n+1)}(0)} + \varepsilon_{x}\right\}x \] が成り立つ。ただし \(x \to 0\) で \(\varepsilon_{x} \to 0\) とする。 [例 55.12 と同じ方法を使う]

  3. \(f(x) = \dfrac{1}{1 + x}\) として前問の結果を確認せよ。 [\((1 + \theta_{n}x)^{n+1} = 1 + x\) となる]

  4. \(f(x)\) が三次までの導関数を持つとする。このとき \[ f(b) = f(a) + \dfrac{1}{2}(b - a) \{f'(a) + f'(b)\} - \dfrac{1}{12}(b - a)^{3} f'''(\alpha) \] を示せ。ここで \(a \lt \alpha \lt b\) とする。 [関数 \[ \begin{aligned} & f(x) - f(a) - \dfrac{1}{2}(x - a) \{f'(a) + f'(x)\}\\ & \qquad - \left(\frac{x - a}{b - a}\right)^{3} [f(b) - f(a) - \dfrac{1}{2}(b - a) \{f'(a) + f'(b)\}] \end{aligned} \] に §147 と同様の議論を適用する]

  5. 前問と同じ条件で次を示せ: \[ f(b) = f(a) + (b - a) f'\{\dfrac{1}{2}(a + b)\} + \dfrac{1}{24}(b - a)^{3}f'''(\alpha) \]

  6. 同様に \(f(x)\) が五次までの導関数を持つとき次の等式が成り立つと示せ: \[ \begin{aligned} f(b) = f(a) & + \dfrac{1}{6}(b - a) [f'(a) + f'(b) + 4f'\{\dfrac{1}{2}(a + b)\}] \\ & - \dfrac{1}{2880}(b - a)^{5} f^{(5)}(\alpha) \end{aligned} \]

  7. 同じ条件で次を示せ: \[ \begin{aligned} f(b) = f(a) & + \dfrac{1}{2}(b - a) \{f'(a) + f'(b)\} \\ & - \dfrac{1}{12}(b - a)^{2} \{f''(b) - f''(a)\} + \dfrac{1}{720}(b - a)^{5} f^{(5)}(\alpha) \end{aligned} \]

  8. 次の等式を示せ:

    1. \(\displaystyle \begin{vmatrix} f(a) & f(b)\\ g(a) & g(b) \end{vmatrix} = (b - a) \begin{vmatrix} f(a) & f'(\beta)\\ g(a) & g'(\beta) \end{vmatrix}\)

      \(\beta\) は \(a\) と \(b\) の間にあるとする。

    2. \(\displaystyle\begin{vmatrix} f(a) & f(b) & f(c)\\ g(a) & g(b) & g(c)\\ h(a) & h(b) & h(c)\end{vmatrix}= \dfrac{1}{2} (b - c)(c - a)(a - b)\begin{vmatrix} f(a) & f'(\beta) & f''(\gamma)\\ g(a) & g'(\beta) & g''(\gamma)\\ h(a) & h'(\beta) & h''(\gamma)\end{vmatrix}\)

      \(\beta\) と \(\gamma\) は \(a,\ b,\ c\) の最小値と最大値の間にあるとする。

    [(ii) の証明では、関数 \[ \phi(x) = \begin{vmatrix} f(a) & f(b) & f(x)\\ g(a) & g(b) & g(x)\\ h(a) & h(b) & h(x) \end{vmatrix} - \frac{(x - a)(x - b)}{(c - a)(c - b)} \begin{vmatrix} f(a) & f(b) & f(c)\\ g(a) & g(b) & g(c)\\ h(a) & h(b) & h(c) \end{vmatrix} \] を考える。この関数は \(x = a\) と \(x = b\) と \(x = c\) で \(0\) になる。§121 の定理 B から、\(a,\ b,\ c\) の最小値と最大値の間の二つの \(x\) で \(\phi(x)\) の一次導関数が \(0\) になること、さらに同じく \(a,\ b,\ c\) の最小値と最大値の間にある一つの \(\gamma\) で \(\phi(x)\) の二次導関数が \(0\) になることが分かる。ここから \[ \begin{vmatrix} f(a) & f(b) & f(c)\\ g(a) & g(b) & g(c)\\ h(a) & h(b) & h(c) \end{vmatrix} = \dfrac{1}{2}(c - a)(c - b) \begin{vmatrix} f(a) & f(b) & f''(\gamma)\\ g(a) & g(b) & g''(\gamma)\\ h(a) & h(b) & h''(\gamma) \end{vmatrix} \] を得る。残りの証明は易しい]

  9. \(F(x)\) の \(n\) 次までの導関数が連続で、\(n - 1\) 次までの導関数は \(x = 0\) で \(0\) になるとする。これに加えて \(0 \leq x \leq h\) のとき \(A \leq F^{(n)}(x) \leq B\) なら、\(0 \leq x \leq h\) で \(A(x^{n}/n!) \leq F(x) \leq B(x^{n}/n!)\) だと示せ。

    この結果を \[ f(x) - f(0) - xf'(0) - \cdots - \frac{x^{n-1}}{(n - 1)!} f^{(n-1)}(0) \] に適用し、テイラーの定理を導け。

  10. \(\Delta_{h}\phi(x) = \phi(x) - \phi(x + h),\ \Delta_{h}^{2}\phi(x) = \Delta_{h}\{\Delta_{h}\phi(x)\},\ \ldots\) とする。\(\phi(x)\) が \(n\) 次までの導関数を持つなら \[ \Delta_{h}^{n}\phi(x) = \sum_{r=0}^{n}(-1)^{r} \binom{n}{r} \phi(x + rh) = (-h)^{n} \phi^{(n)}(\xi) \] が成り立つ。ここで \(\xi\) は \(x\) と \(x + nh\) の間にあるとする。さらに \(\phi^{(n)}(x)\) が連続なら、\(h \to 0\) で \(\{\Delta_{h}^{n}\phi(x)\}/h^{n} \to (-1)^{n}\phi^{(n)}(x)\) だと示せ。 [\(n = 2\) に対するこの結果は 例 55.13 で示した]

  11. 問題 10 を使って \(x \to \infty\) のとき \(x^{n-m}\, \Delta_{h}^{n} x^{m} \to m(m - 1) \cdots (m - n + 1)h^{n}\) だと示せ。\(m\) は任意の有理数で、\(n\) は任意の整数とする。これを使って次の式を証明せよ: \[ x\sqrt{x} \{\sqrt{x} - 2\sqrt{x + 1} + \sqrt{x + 2}\} \to -\dfrac{1}{4} \]

  12. \(y = \phi(x)\) の導関数が少なくとも四次まで連続であり、\(\phi(0) = 0\) および \(\phi'(0) = 1\) が成り立つとする。このとき \(x \to 0\) で \(\varepsilon_{x} \to 0\) となる \(\varepsilon_{x}\) を使って \[ y = \phi(x) = x + a_{2}x^{2} + a_{3}x^{3} + (a_{4} + \varepsilon_{x})x^{4} \] とできる。次の等式を示せ: \[ x = \psi(y) = y - a_{2}y^{2} + (2a_{2}^{2} - a_{3})y^{3} - (5a_{2}^{3} - 5a_{2}a_{3} + a_{4} + \varepsilon_{y})y^{4} \] ただし \(y \to 0\) で \(\varepsilon_{y} \to 0\) とする。なおこのとき \(x\) も \(0\) に向かう。加えて \(x \to 0\) で \[ \frac{\phi(x)\psi(x) - x^{2}}{x^{4}} \to a_{2}^{2} \] だと示せ。

  13. 曲線 \(x = f(t),\ y = F(t)\) の曲率中心の座標 \((\xi, \eta)\) が \[ -\frac{\xi - x}{y'} = \frac{\eta - y}{x'} = \frac{{x'}^{2} + {y'}^{2}}{x'y'' - x''y'} \] で与えられ、曲率半径が \[ \frac{({x'}^{2} + {y'}^{2})^{3/2}}{x'y'' - x''y'} \] で与えられると示せ。ダッシュは \(t\) に関する微分を表す。

  14. 曲線 \(27ay^{2} = 4x^{3}\) 上の点 \((x, y)\) における曲率中心の座標 \((\xi, \eta)\) は \[ 3a(\xi + x) + 2x^{2} = 0, \quad \eta = 4y + \frac{9ay}{x} \] で与えられる。

    (Math. Trip. 1899.)

  15. 曲線上の点 \((x, y)\) で \((1 + y_{1}^{2})y_{3} = 3y_{1}y_{2}^{2}\) が成り立つとき、\((x, y)\) における曲率円と曲線が三次の接触点を持つと示せ。さらに全ての点でこの性質を持つ唯一の曲線が円であること、この性質を持つ円錐曲線上の点が軸の端点のみであることを示せ。

  16. \(y = ax^{2} + bx^{3} + cx^{4} + \cdots + kx^{n}\) と原点で交わる円錐曲線で接触点の次数が最も高いものは \(a^{3}y = a^{4}x^{2} + a^{2}bxy + (ac - b^{2})y^{2}\) である。この事実を使って、曲線 \(y = f(x)\) と \((\xi, \eta)\) で交わる円錐曲線で接触点の次数が最も高いものは \[ 18\eta_{2}^{3}T = 9\eta_{2}^{4}(x - \xi)^{2} + 6\eta_{2}^{2}\eta_{3}(x - \xi)T + (3\eta_{2}\eta_{4} - 4\eta_{3}^{2})T^{2} \] だと示せ。ここで \(T = (y - \eta) - \eta_{1}(x - \xi)\) とする。

    (Math. Trip. 1907.)

  17. 同次関数1: \(u = x^{n} f(y/x, z/x,\ \ldots)\) とすると、\(x,\ y,\ z,\ \ldots\) が一定の比 \(\lambda : 1\) で増加するとき \(u\) の値は \(\lambda^{n}\) 倍になる以外は変化しない。このとき \(u\) を変数 \(x,\ y,\ z,\ \ldots\) に関する 次数 \(\bm{n}\) の同次関数 (homogeneous function of degree \(n\)) と呼ぶ。\(u\) が次数 \(n\) の同次関数なら \[ x\frac{\partial u}{\partial x} + y\frac{\partial u}{\partial y} + z\frac{\partial u}{\partial z} + \cdots = nu \] が成り立つことを示せ。この結果は同次関数に関するオイラーの定理と呼ばれる。

  18. \(u\) が次数 \(n\) の同次関数なら、\(\dfrac{\partial u}{\partial x},\ \dfrac{\partial u}{\partial y},\ \ldots\) は次数 \(n - 1\) の同次関数である。

  19. \(f(x, y) = 0\) を \(x\) と \(y\) に関する等式 (例えば \(x^{n} + y^{n} - x = 0\)) として、新しく変数 \(z\) を導入することで \(f(x, y)\) を同次にした等式 (例えば \(x^{n} + y^{n} - xz^{n-1} = 0\)) を \(F(x, y, z) = 0\) とする。曲線 \(f(x, y) = 0\) 上の 点 \((\xi, \eta)\) における接線の方程式が \[ xF_{\xi} + yF_{\eta} + zF_{\zeta} = 0 \] だと示せ。ここで \(F_{\xi},\ F_{\eta},\ F_{\zeta}\) は \(x = \xi,\ y = \eta,\ z = \zeta = 1\) における \(F_{x},\ F_{y},\ F_{z}\) の値を表す。

  20. 独立関数と従属関数 (ヤコビアンあるいは関数行列式): \(u\) と \(v\) が \(x\) と \(y\) の関数で、恒等的な関係 \[ \phi(u, v) = 0 \qquad \text{(1)} \] で結ばれているとする。

    \(\text{(1)}\) を \(x\) および \(y\) に関して微分すると \[ \frac{\partial \phi}{\partial u}\, \frac{\partial u}{\partial x} + \frac{\partial \phi}{\partial v}\, \frac{\partial v}{\partial x} = 0,\quad \frac{\partial \phi}{\partial u}\, \frac{\partial u}{\partial y} + \frac{\partial \phi}{\partial v}\, \frac{\partial v}{\partial y} = 0 \qquad \text{(2)} \] を得る。ここから \(\phi\) の導関数を削除すると \[ J = \begin{vmatrix} u_{x} & u_{y}\\ v_{x} & v_{y} \end{vmatrix} = u_{x}v_{y} - u_{y}v_{x} = 0 \qquad \text{(3)} \] となる。ここで \(u_{x},\ u_{y},\ v_{x},\ v_{y}\) は \(u\) と \(v\) の \(x\) と \(y\) に関する導関数を表す。つまりこの条件は \(\text{(1)}\) を満たす関係が存在するための必要条件である。実はこの条件が十分でもあることが証明できる。詳細はグルサ著 Cours d' Analyse, vol. i, pp. 125 et seq. に譲る。

    二つの関数 \(u\) と \(v\) が \(\text{(1)}\) の関係で結ばれているとき \(u\) と \(v\) は従属 (dependent)であると言い、そうでないなら独立 (independent) であると言う。\(J\) は \(x\) と \(y\) に関する \(u\) と \(v\) の ヤコビアン (Jacobian) あるいは関数行列式 (functional determinant) と呼ばれ、次のように表記される: \[ J = \frac{\partial(u, v)}{\partial(x, y)} \]

    同様の結果は変数が任意個の関数でも成り立つ。例えば三変数 \(x,\ y,\ z\) に関する三つの関数 \(u,\ v,\ w\) が \(\phi(u, v, w) = 0\) という関係で結ばれるのは全ての \(x,\ y,\ z\) で \[ J = \begin{vmatrix} u_{x} & u_{y} & u_{z}\\ v_{x} & v_{y} & v_{z}\\ w_{x} & w_{y} & w_{z} \end{vmatrix} = \frac{\partial(u, v, w)}{\partial(x, y, z)} \] が \(0\) になるときで、そうでないなら \(u,\ v,\ w\) を結ぶ関係は存在しない。

  21. \(ax^{2} + 2hxy + by_{2}\) と \(Ax^{2} + 2Hxy + By^{2}\) は \(\dfrac{a}{A} = \dfrac{h}{H} = \dfrac{b}{B}\) でない限り独立となる。

  22. \(ax^{2} + by^{2} + cz^{2} + 2fyz + 2gzx + 2hxy\) が \(x,\ y,\ z\) の線形関数二つの積として表せるのは \[ abc + 2fgh - af^{2} - bg^{2} - ch^{2} = 0 \] が成り立つときに限ることを示せ。

    [\(px + qy + rz\) と \(p'x + q'y + r'z\) が与えられた関数で結び付くための条件を関数の関係として書く]

  23. \(u\) と \(v\) が \(\xi\) と \(\eta\) の関数で、さらに \(\xi\) と \(\eta\) が \(x\) と \(y\) の関数とする。このとき \[ \frac{\partial(u, v)}{\partial(x, y)} = \frac{\partial(u, v)}{\partial(\xi, \eta)}\, \frac{\partial(\xi, \eta)}{\partial(x, y)} \] が成り立つ。この結果を任意個の変数の場合に拡張せよ。

  24. 導関数が \(1/x\) であり \(x = 1\) で \(0\) となる関数を \(f(x)\) とする。\(u = f(x) + f(y)\) および \(v = xy\) とすれば \(u_{x}v_{y} - u_{y}v_{x} = 0\) であり、したがって \(u\) と \(v\) が何らかの関数の関係で結ばれることを示せ。さらに \(y = 1\) を代入し、この関係が \(f(x) + f(y) = f(xy)\) でなければならないと示せ。同様に \(f(x)\) の導関数が \(1/(1 + x^{2})\) で \(f(0) = 0\) なら、\(f(x)\) は \[ f(x) + f(y) = f\left(\frac{x + y}{1 - xy}\right) \] を満たさなければならないと示せ。

  25. \(\displaystyle f(x) = \int_{0}^{x} \frac{dt}{\sqrt{1 - t^{4}}}\) のとき次を示せ: \[ f(x) + f(y) = f\left\{ \frac{x\sqrt{1 - y^{4}} + y\sqrt{1 - x^{4}}}{1 + x^{2}y^{2}} \right\} \]

  26. 関数の関係が \[ \begin{aligned} u & = f(x) + f(y) + f(z),\\ v & = f(y)f(z) + f(z)f(x) + f(x)f(y),\\ w & = f(x)f(y)f(z) \end{aligned} \] の間に存在するなら、\(f\) は定数だと示せ。 [関数の関係が存在するための条件は \[ f'(x)f'(y)f'(z) \{f(y) - f(z)\} \{f(z) - f(x)\} \{f(x) - f(y)\} = 0 \] となる]

  27. \(f(y, z),\ f(z, x),\ f(x, y)\) が関数の関係で結ばれるなら、\(f(x, x)\) は \(x\) と独立である。

    (Math. Trip. 1909.)

  28. \(u = 0,\ v = 0,\ w = 0\) が三つの円の方程式で、問題 19 の方法で同次になっているとする。このとき \[ \frac{\partial(u, v, w)}{\partial(x, y, z)} = 0 \] は三つの円全てと直行する円を表す。

    (Math. Trip. 1900.)

  29. \(A,\ B,\ C\) が \(x\) の関数で、 \[ \begin{vmatrix} A & A' & A''\\ B & B' & B''\\ C & C' & C'' \end{vmatrix} \] が恒等的に \(0\) になるとする。このとき \(\lambda A + \mu B + \nu C\) が恒等的に \(0\) になるような定数 \(\lambda,\ \mu,\ \nu\) を見つけられる。逆も成り立つ。 [逆はほぼ自明である。順方向の命題を示すには、\(\alpha = BC' - B'C,\ \ldots\) とすると上の行列式が \(0\) より \(\beta\gamma' - \beta'\gamma = 0,\ \ldots\) となる事実を使う。ここから比 \(\alpha : \beta : \gamma\) が定数と分かるが、一方で \(\alpha A + \beta B + \gamma C = 0\) が成り立つ]

  30. 三つの変数 \(x,\ y,\ z\) がある関係で結ばれていて、\(z\) が \(x\) と \(y\) の関数で導関数 \(z_{x},\ z_{y}\) を持ち、\(x\) は \(y\) と \(z\) の関数で導関数 \(x_{y},\ x_{z}\) を持つとする。次を示せ: \[ x_{y} = - \frac{z_{y}}{z_{x}},\quad x_{z} = \frac{1}{z_{x}} \]

  31. 四つの変数 \(x,\ y,\ z,\ u\) が二つの関係で結ばれていて、どの二つも他の二つの関数として表せるとする。このとき \[ y_{z}^{u}z_{x}^{u}x_{y}^{u} = -y_{z}^{x}z_{x}^{y}x_{y}^{z} = 1,\quad x_{z}^{u}z_{x}^{y} + y_{z}^{u}z_{y}^{x} = 1 \] を示せ。\(y_{z}^{u}\) は \(z\) と \(u\) の関数として表した \(y\) の \(z\) に関する導関数を表す。

    (Math. Trip. 1897.)

  32. 次の関数の四次までの導関数が \(x = 0\) で \(0\) になるような \(A,\ B,\ C,\ \lambda\) を求めよ: \[ \int_{a}^{a+x} f(t)\, dt - x[Af(a) + Bf(a + \lambda x) + Cf(a + x)] \] さらに次の関数の六次までの導関数が \(x = 0\) で \(0\) になるような \(A,\ B,\ C,\ D,\ \lambda,\ \mu\) を求めよ: \[ \int_{a}^{a+x} f(t)\, dt - x[Af(a) + Bf(a + \lambda x) + Cf(a + \mu x) + Df(a + x)] \]

  33. \(a \gt 0,ac - b^{2} \gt 0\) かつ \(x_{1} \gt x_{0}\) とする。このとき \[ \int_{x_{0}}^{x_{1}} \frac{dx}{ax^{2} + 2bx + c} = \frac{1}{\sqrt{ac - b^{2}}} \arctan\left\{ \frac{(x_{1} - x_{0}) \sqrt{ac - b^{2}}} {ax_{1}x_{0} + b(x_{1} + x_{0}) + c} \right\} \] が成り立つ。タンジェントの逆関数は \(0\) から \(\pi\) の値を取るとする2

  34. 積分 \(\displaystyle\int_{-1}^{1} \frac{\sin\alpha\, dx}{1 - 2x\cos\alpha + x^{2}}\) を計算せよ。\(\alpha\) の関数としてのこの積分が不連続となる \(\alpha\) の値は何か?

    (Math. Trip. 1904.)

    [積分は \(n\) を整数として \(2n\pi \lt \alpha \lt (2n + 1)\pi\) なら \(\frac{1}{2}\pi\)、\((2n - 1)\pi \lt \alpha \lt 2n\pi\) なら \(-\frac{1}{2}\)、\(\alpha\) が \(\pi\) の倍数なら \(0\) となる]

  35. \(x_{0} \leq x \leq x_{1}\) で \(ax^{2} + 2bx + c \gt 0\) が成り立つとする。\(f(x) = \sqrt{ax^{2} + 2bx + c}\) および \[ y = f(x),\quad y_{0} = f(x_{0}),\quad y_{1} = f(x_{1}),\quad X = \frac{x_{1} - x_{0}}{y_{1} + y_{0}} \] とすると、\(a\) の正負に応じて \[ \int_{x_{0}}^{x_{1}} \frac{dx}{y} = \frac{1}{\sqrt{a}} \log \frac{1 + X\sqrt{a}}{1 - X\sqrt{a}},\quad \frac{-2}{\sqrt{-a}} \arctan\{X\sqrt{-a}\} \] が成り立つ。後者におけるタンジェントの逆関数の値は \(0\) から \(\frac{1}{2}\pi\) とする。 [置換 \(t = \dfrac{x - x_{0}}{y + y_{0}}\) を使うと積分が \(\displaystyle 2\int_{0}^{X} \frac{dt}{1 - at^{2}}\) の形に簡略化される]

  36. \(\displaystyle \int_{0}^{a} \frac{dx}{x + \sqrt{a^{2} - x^{2}}} = \dfrac{1}{4}\pi\) を示せ。

    (Math. Trip. 1913.)

  37. \(a \gt 1\) なら \(\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{\sqrt{1 - x^{2}}}{a - x}\, dx = \pi\{a - \sqrt{a^{2} - 1}\}\) だと示せ。

  38. \(p \gt 1\) かつ \(0 \lt q \lt 1\) なら \[ \int_{0}^{1} \frac{dx}{\sqrt{\{1 + (p^{2} - 1)x\}\{1 - (1 - q^{2}) x\}}} = \frac{2\omega}{(p + q)\sin\omega} \] だと示せ。\(\omega\) はコサインが \(\dfrac{1 + pq}{p + q}\) の正の鋭角とする。

  39. \(a \gt b \gt 0\) なら \(\displaystyle \int_{0}^{2\pi} \frac{\sin^{2}\theta\, d\theta}{a - b\cos\theta} = \frac{2\pi}{b^{2}} \{a - \sqrt{a^{2} - b^{2}}\}\) が成り立つ。

    (Math. Trip. 1904.)

  40. \(a \gt \sqrt{b^{2} + c^{2}}\) なら \[ \int_{0}^{\pi} \frac{d\theta}{a + b\cos\theta + c\sin\theta} = \frac{2}{\sqrt{a^{2} - b^{2} - c^{2}}} \arctan \left\{\frac{\sqrt{a^{2} - b^{2} - c^{2}}}{c}\right\} \] だと示せ。タンジェントの逆関数の値は \(0\) から \(\pi\) とする。

  41. \(f(x)\) が連続で負の値を取らないとする。\(\displaystyle\int_{a}^{b} f(x)\, dx = 0\) なら、\(a\) と \(b\) の間の全ての \(x\) に対して \(f(x) = 0\) だと示せ。 [\(f(x)\) が \(x = \xi\) で正の実数 \(k\) に等しいとすると、\(f(x)\) の連続性より区間 \([\xi - \delta, \xi + \delta]\) であって区間全体で \(f(x) \gt \frac{1}{2}k\) が成り立つものが存在する。このとき積分の値は \(\delta k\) より大きくなる]

  42. 積分に対するシュワルツの不等式: 次を示せ: \[ \left(\int_{a}^{b} \phi\psi\, dx\right)^{2} \leq \int_{a}^{b} \phi^{2}\, dx \int_{a}^{b} \psi^{2}\, dx \]

    [§156§157 の定義および不等式 \[ \left(\sum\phi_{\nu}\psi_{\nu}\, \delta_{\nu}\right)^{2} \leq \sum\phi_{\nu}^{2}\, \delta_{\nu} \sum\psi_{\nu}^{2}\, \delta_{\nu} \] を使う。参考: 第一章に関するその他の例 10]

  43. \(P_{n}\) を \[ P_{n}(x) = \frac{1}{(\beta - \alpha)^{n} n!} \left(\frac{d}{dx}\right)^{n} \{(x - \alpha)(\beta - x)\}^{n} \] と定めると、\(P_{n}(x)\) は次数 \(n\) の多項式となる。さらに \(P_{n}\) には次数が \(n\) 未満の任意の多項式 \(\theta(x)\) に対して \[ \int_{\alpha}^{\beta} P_{n}(x)\theta(x)\, dx = 0 \] が成り立つという性質がある。 [\(\theta(x)\) の次数を \(m\) として、部分積分を \(m + 1\) 回行う。さらに \(\theta^{(m+1)}(x) = 0\) を使う]

  44. \(m \neq n\) なら \(\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} P_{m}(x) P_{n}(x)\, dx = 0\) だが、\(m = n\) ならこの積分の値は \(\dfrac{\beta - \alpha}{2n + 1}\) だと示せ。

  45. 次数が \(n\) より小さい任意の多項式 \(\theta(x)\) に対して次の等式が成り立つ \(n\) 次の方程式を \(Q_{n}(x)\) とする: \[ \int_{\alpha}^{\beta} Q_{n}(x)\theta(x)\, dx = 0 \] \(Q_{n}(x)\) が \(P_{n}(x)\) の定数倍だと示せ。

    [\(Q_{n} - \kappa P_{n}\) の次数が \(n - 1\) となるように \(\kappa\) を選べる。このとき \[ \int_{\alpha}^{\beta} Q_{n}(Q_{n} - \kappa P_{n})\, dx = 0,\quad \int_{\alpha}^{\beta} P_{n}(Q_{n} - \kappa P_{n})\, dx = 0 \] であり、ここから \[ \int_{\alpha}^{\beta} (Q_{n} - \kappa P_{n})^{2}\, dx = 0 \] が成り立つと分かる。この等式には問題 41 を適用できる]

  46. 定積分の近似: 積分 \(\displaystyle\int_{a}^{b} \phi(x)\, dx\) の値を \(\dfrac{1}{2}(b - a) \{\phi(a) + \phi(b)\}\) と近似したときの誤差が \(\dfrac{1}{12}M(b - a)^{3}\) より小さいと示せ。\(M\) は区間 \([a, b]\) における \(|\phi''(x)|\) の最大値とする。また \((b - a)\phi\{\dfrac{1}{2}(a + b)\}\) と近似したときの誤差は \(\dfrac{1}{24}M(b - a)^{3}\) より小さいと示せ。 [\(f'(x) = \phi(x)\) として問題 4, 5 を適用する] さらに積分を \[ \dfrac{1}{6}(b - a)\left[\phi(a) + \phi(b) + 4\phi\{\dfrac{1}{2}(a + b)\}\right] \] と近似したときの誤差が \(\dfrac{1}{2880}M(b - a)^{5}\) より小さいと示せ。ここでは \(M\) を \(\phi^{(4)}(x)\) の最大値とする。 [問題 6 を使う。非常に正確な近似を与えるこの公式はシンプソン則 (Simpson's Rule) と呼ばれる。これは一つ目の近似の三分の一と二つ目の近似の三分の二の和となっている]

    シンプソン則が計算する近似値が、曲線 \(y = \phi(x)\) 上の \(x\) 座標が \(a,\ \dfrac{1}{2}(a + b),\ b\) である三点を通る軸が \(y\) 軸に平行な放物線と三つの直線 \(x = a,\ x = b,\ y = 0\) で囲まれた部分の面積だと示せ。

    \(\phi(x)\) が三次方程式なら \(\phi^{(4)(x)} = 0\) なので、シンプソン則は正確な等式となることが分かる。つまり \(x\) 座標が \(a,\ \dfrac{1}{2}(a + b),\ b\) の三点が与えられたとき、それらを通る曲線 \(y = \alpha + \beta x + \gamma x^{2} + \delta x^{3}\) が無限に存在するが、その全てが同じ面積を与える。そして \(\delta = 0\) である曲線が一つ存在し、これが放物線である。

  47. \(\phi(x)\) が五次の多項式なら、\(x^{2} - x + \dfrac{1}{10} = 0\) の根を \(\alpha\) と \(\beta\) として \[ \int_{0}^{1} \phi(x)\, dx = \dfrac{1}{18}\{5\phi(\alpha) + 8\phi(\tfrac{1}{2}) + 5\phi(\beta)\} \] が成り立つ。

    (Math. Trip. 1909.)

  48. シンプソン則を \(\displaystyle\dfrac{1}{4}\pi = \int_{0}^{1} \frac{dx}{1 + x^{2}}\) に適用し、\(\pi\) を計算せよ。 [積分は \(.7833\ldots\) となる。積分を \(0\) から \(\dfrac{1}{2}\) と \(\dfrac{1}{2}\) から \(1\) に分割してからシンプソン則を使うと \(.7853916\ldots\) を得る。正確な値は \(.7853981\ldots\) である]

  49. 次を示せ: \[ 8.9 \lt \int_{3}^{5} \sqrt{4 + x^{2}}\, dx \lt 9 \]

    (Math. Trip. 1903.)

  50. 次の積分を小数点以下第二位まで計算せよ: \[ \int_{0}^{1} \frac{dx}{1 + x},\quad \int_{0}^{1} \frac{dx}{\sqrt{1 + x^{4}}},\quad \int_{0}^{\pi} \sqrt{\sin x}\, dx,\quad \int_{0}^{\pi} \frac{\sin x}{x}\, dx \] [最後の積分の被積分関数は \(x = 0\) で定義されないが、\(x = 0\) で \(1\) と定めれば積分区間で連続となる]


  1. この例と次の例では全ての導関数の連続性を仮定する。[return]

  2. 問題 33–35, 38, 40 に関連する話題については Messenger of Mathematics, vol. xxxv のブロムウィッチ博士による論文を参照。[return]

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