§169 ディリクレの定理
収束と発散の判定法についてさらに議論を進める前に、正項級数に関する一般的で重要な定理を一つ証明する。
正項級数の和は項の順序を変えても変化しない1。
正項級数 \(u_{0} + u_{1} + u_{2} + \cdots\) が収束するなら、同じ項を並べて変えてできる任意の級数 \[ v_{0} + v_{1} + v_{2} + \cdots \] も収束し、和が元の級数と等しいことをこの定理は意味する。もちろん項を取り除いてはいけない: 全ての \(u\) は \(v\) のどこかで現れ、その逆も成り立つ。
証明は非常に容易である。\(u\) の和を \(s\) とする。\(u\) から任意の数の項を取ってくると、それらの和は \(s\) 以下となる。一方で全ての \(v\) は \(u\) だから、\(v\) から任意の数の項を取ってきてもその和は \(s\) 以下となる。よって \(\sum v_{n}\) は収束し、その和 \(t\) は \(s\) 以下と分かる。同様に \(s \leq t\) も示せるから、\(s = t\) が成り立つ。
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この定理はディリクレによって 1837 年に初めてはっきりと述べられたようだが、それ以前の学者 (特にコーシー) に知られていたのは間違いない。[return]