§176 コーシーの凝集判定法

§172 で触れた判定法の二つ目を次に示す:

\(u_{n} = \phi(n)\) が \(n\) の単調減少関数なら、\(\sum \phi(n)\) は \(\sum 2^{n}\phi(2^{n})\) と同じように収束または発散する。

証明には §77 で \(\sum(1/n)\) に対して使ったのと同じ議論を使う。まず \[ \begin{aligned} \phi(3) + \phi(4) & \geq 2\phi(4), \\ \phi(5) + \phi(6) + \cdots + \phi(8) & \geq 4\phi(8), \\ \cdots \cdots \cdots \\ \phi(2^{n} + 1) + \phi(2^{n} + 2) + \cdots + \phi(2^{n+1}) & \geq 2^{n}\phi(2^{n+1}) \end{aligned} \] が成り立つ。\(\sum 2^{n}\phi(2^{n})\) が発散するなら \(\sum 2^{n+1}\phi(2^{n+1})\) および \(\sum 2^{n}\phi(2^{n+1})\) も発散するので、これらの不等式から \(\sum\phi(n)\) が発散することが分かる。

一方で \[ \begin{aligned} \phi(2) + \phi(3) & \leq 2\phi(2),\\ \phi(4) + \phi(5) + \cdots + \phi(7) & \leq 4\phi(4),\\ \cdots \cdots \cdots \\ \phi(2^{n} + 1) + \phi(2^{n} + 2) + \cdots + \phi(2^{n+1}) & \leq 2^{n}\phi(2^{n}) \end{aligned} \] からは \(\sum 2^{n}\phi(2^{n})\) が収束するなら \(\sum \phi(n)\) も収束すると分かる。示すべき命題はこれで証明された。

今の私たちにとって、この判定法の応用範囲は積分判定法のそれと大差ない。例えば凝集判定法を使えば級数 \(\sum n^{-s}\) を積分判定法を使った場合と同じぐらい簡単に議論できる。つまり \(\sum n^{-s}\) は \(\sum 2^{n}2^{-ns}\) と同じように収束または発散すると分かるので、ここから \(s \gt 1\) なら収束し \(s \leq 1\) なら発散すると結論できる。

例 72
  1. \(a\) を \(1\) より大きい正の整数とする。\(\sum \phi(n)\) は \(\sum a^{n}\phi(a^{n})\) と同じように収束または発散すると示せ。 [上と同じ議論を使い、項を \(a,\ a^{2},\ a^{3},\ \ldots\) 個ずつまとめる]

  2. \(\sum 2^{n}\phi(2^{n})\) が収束するとき当然 \(\lim 2^{n}\phi(2^{n}) = 0\) が成り立つ。これを使って §173 のアーベルの定理を導け。

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