§177 無限積分
§174 の積分判定法によると、 が常に正で に関して単調減少なら、級数 の収束と発散は積分関数 が で極限に向かうか無限大に向かうかに一致する。 が極限に向かうとすると、 が成り立つ。このとき積分 が収束して値 を持つと言うことにする。この積分を無限積分 (infinite integral) と呼ぶ。
上述の定義では が正で単調減少だとしたが、そうでない場合にも自然に定義を拡張できる。さらに積分の下端が であるべき特別な理由もない。こうして次の定義が導かれる:
が で連続で が成り立つなら、無限積分 が収束して値が になると言う。
無限積分と区別するために、第七章で定義した下端 から上端 までの通常の積分を有限積分 (finite integral) と呼ぶことがある。
一方で なら、積分は に発散すると言う。 についても同様に定義する。さらに以上のどれでもないなら、 で積分は有限または無限に振動すると言う。
この定義に関して注意すべき点を述べる。
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を と定義すれば、左辺の積分が収束・発散・振動するのは が で極限に向かう・ または に向かう・振動するときとなる。 が極限に向かうときその極限を と表記すれば、積分の値も となる。より一般的に言えば、無限積分の値は の不定積分の一つを として と表せる。
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が常に正となる特別な場合には は の単調増加関数となり、積分は収束するかそうでなければ に発散する。
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積分 の値はもちろん によって変化するが、 の値は関係がない。 を他の文字と入れ替えても意味は変化しない (参考: §157)。
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や といった有限の値を持つ式を無限積分と呼ぶのは読者を困惑させるに違いない。無限積分と有限積分の違いは無限級数と有限級数の違いと同じようなものと考えるとよい: 無限級数が必ず発散するなどとは誰も思わない。
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§156–§157 で積分 は一重の極限、つまりとある有限の和の極限として定義された。そのため無限積分は極限の極限であり、こういった値は反復極限 (repeated limit) と呼ばれる。無限積分は有限積分と本質的に異なる概念であり、だからこそここで個別に定義をした。
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§174 の積分判定法は次のように言い換えられる: が常に正で に関して単調増加なら、無限級数 の収束と発散は無限積分 の収束と発散に一致する。
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無限積分に対する §77 の – と同様の結果の証明に難しい部分はないだろう。例えば に対応する命題は次のようになる: が収束するなら に対する も収束し が成り立つ。